2011年07月

2011年07月31日


P1010012夜走る


午前0時。
またしても、深夜の中央フリーウェイ。
今回の目的地は名古屋。往復650kmの行程です。

中央道を西に向かう時は、信州駒ケ岳のサービスエリアで
夜食に駒ケ岳ラーメンを注文するのが、社長の恒例なのです。
夜明けのラーメン、体に悪いかなあ~と思うのですが、

でも旨いんだな、これが。

P1010013ラーメン


ちなみに東名高速を西に下る時は、浜名湖のサービスエリアで
うな玉丼を夜食にするのが恒例です。これはさすがに
胃に良くない。おまけにゴボウが入ってるからもたれる。

でも旨いんだな、これが。

長距離のお薦めアイテムのひとつ、布草履。
洗濯出来るので室内履きにもいいですよ。
全国のバスガイドさんにも愛用者が多いとか。
お客さんが降りた後、履き替えるんですかねえ。

P1010018布草履



開府400年。人と文化の集う名古屋。

東京で生まれ育った社長ですが、幼少期に名古屋に住んでました。
父は旧運輸省の元官僚で、公務で3年間ほど市街地のはずれ
にある屋敷に暮らしました。
60年代半ば。社長は名古屋市立八事東小学校に入学しました。

いつも上級生たちと一緒に、山で木に登り、川で魚を捕まえ、
畑を荒らし、牧場で牛に追いかけられ・・・
みんな風呂敷をマントにすれば、怖いものなしの探検隊員に変身。

幼少時代、自然と触れ合ったことが、現在の作庭の感性に生かされている
とやっぱり実感しますね。

P1010112名古屋

すっかり変わった名古屋駅付近。
昔はロッテの地球儀がシンボルだったのに。

当時は駄菓子屋でアイスキャンディが5円。
(袋に東京タワーみたいな絵が描いてあった)
おもちゃ屋ではサンダーバード3号のプラモデルが50円。
(先端をはずすと中に鉛筆が入るやつ)
100円札を出せば、昆虫採集セットが買えました。
(これはルーペとピンセットと注射器と毒薬がセットの本格派。
赤い注射液で虫を殺し、青い注射液は虫を腐らせない薬剤)

今では考えられないですね。

想い出はセピア色、と言いますが記憶の中の風景は本当に
セピア色でした。
でも、何度か仕事で名古屋に来るうちに気がついてしまったのです。

愛知県の土は花崗岩が風化して砂状になった真砂土(まさど)質です。
だから河川も山肌も公園も庭も、土は色褪せた薄い褐色をしています。
関東ローム層の土に慣れた人が見ると、まさにどこか懐かしいセピア
の風景なんですよ。

P1010045セピア


今回、過密スケジュールでしたが、数時間自由な時間ができました。
「そうだ、昔住んでいた町を見に行こう」と考えました。
現在の天白区。中心街からそう遠くありません。
でも、地図を眺めると区画整備された町並みが碁盤の目のように。
昔遊んだ音聞山。天白川。セピアの記憶・・・

結局、今回はなんとなく止めました。
そして開いた時間は、名古屋コーチンを食べに。

P1010119コーチン


人生は、喜びも悲しみも、過去も未来も
ひつまぶしのように、ゴチャまぜなんでしょうね。






















冬樹社長fuyukitabata at 01:23│コメント(4)トラックバック(0)

2011年07月23日


社長愛蔵の小品盆栽の梅の老幹。

P梅

この時期、八月半ばまで水遣りを二日おきに控えることで、
来春花をたくさん咲かせるという裏ワザがあるんです。

社長は、ちらほらと控えめに咲く梅の風情が好きですがね。

障壁があると潜在的能力が出てくるのは、樹木も人間も
同じなんですよ。

~ 色よりも 香りこそあはれ と思ふゆれ
  誰が袖ふれし 宿の梅もぞ ~
  (古今和歌集 よみ人知らず)

というわけで、社長のお香好きは有名ですが、火を使わず、
灰もでない塗香(ずこう)というのをご存知でしょうか?
粉末状のお香で、手や首筋に塗ると、はじめはスパイシーな
香りが、やがて体温でほんのりと甘い香りに変わって行くのです。

三年前、京都で400年続く香老舗・薫玉堂で購入した
黒檀の塗香入れ。

P塗香

庭師は時に命がけで仕事をこなさなければなりません。
本来、塗香はお坊さんが魔除けに使うものなんですが、
三年前のその日、ここ一番の大舞台を前に、身を清める為、
颯爽と塗香をつけて臨んでみました。
ところが、不覚にも片目を潰すほどの大怪我をする羽目に・・・

職人には名誉の負傷というものはありません。
怪我は一瞬の油断で起こります。
後悔した時にはもう病院の手術室の中でした。

九死に一生を得たのは、ゴッドハンドの呼び名も高い
名医・土田展夫先生のおかげでした。
奇跡的に失明をまぬがれただけでなく、酷い傷跡も
消しゴムのようにパーフェクトに無くなりました。
何という職人技!

ただ、瞳の虹彩が欠損した為、光の調整機能が失われ、
いわゆるオッドアイ (バイアイとも)になってしまいました。
左右の目の色が違う、よくSF小説に登場する怪しい
超能力者みたいな感じです。
医学的には後天性虹彩異色症といい、有名なところでは
デビッドボウイが、不良少年時代の喧嘩が原因でオッドアイに
なってますね。

デビッド2

オッドアイ2

デビッドボウイと肩を並べた冬樹社長。
入院しても、馬鹿は治らなかった(?)

クドイようですが、怪我は自慢になりません。
若衆には、「怪我だけはするな。」と口うるさいくせに、
振り返れば、どれだけ満身創痍を繰り返して来たことでしょう。

「何かを手に入れるためには、何かを失わなければならない。」
というのが、庭師の修行を通して感じた、社長の持論です。
失うものは、お金であったり、時間であったりと、様々でしょうが、
障壁にぶつかった時、出てくる潜在的能力というのもあります。

凡庸な社長でさえ、目が不自由になった時、心眼力というか、
それまで見えなかったものが閃くように、はっきりと見えたのです。

・・・いや、見えたはずだったのです・・・

・・・たしか、その時は・・・


P変な犬


ところで、塗香をつけたのに、意味無いじゃんって?
いいえ、塗香のおかげで怪我で済んだのでしょう。

人生ポジティブ思考で行かなくちゃ。















冬樹社長fuyukitabata at 20:53│コメント(8)トラックバック(0)

2011年07月18日

冬樹庭園の上野原の置場に植えてある、花筏(ハナイカダ)の実が
脹くらんで来ました。
女性に人気のある花筏ですが、実をつけるにはオス株の存在が
欠かせないんです。
花も今いちパッとしないオス株ですが、縁の下の力持ち的なところが、
世のお父さん達の姿と重なります。

花いかだ

連日猛暑が続いています。

暑さにも負けず、もうひと月以上も休まず仕事をこなしていることをみんなに得意げに話したところ、
「工程計画能力がないだけじゃん」
とさんざん蔑まれてしまいました。

そういうわけで今日はオフ。外出することにしました。
向かった先は、以前社長が植栽や石組の手伝いをしたこともある
大型ショッピングセンター。

社長の買い物のお目当ては扇子。
暑い夏の究極のエコアイテムでしょう。

江戸の昔、城で敷居に手をついて話をしている剣の達人
柳生宗矩を驚かそうと、左右から襖を閉めて首を挟もうと
したが、宗矩はあらかじめ敷居の溝に扇子を置いていたため、
つっかえ棒になり首を挟まれることはなかった。~という逸話が
あります。
同じような話は「二天記」の宮本武蔵にも出てきますね。
社長が修行中には師匠から、庭の奥義は扇形の末広がりにあり
と教わったものです。

P1010449扇子

梟は「不苦労」「福来ろう」といわれ縁起が良いのです。

さて夕飯は「一汁五穀」

P紅ズワイガニ

紅ズワイガニの浜ゆで。
食べられる側の気迫というか、本気が伝わって来るようです。

ズワイガニといえば、冬場の卵の乗った「香箱ガニ」が最高ですな。
北陸の近江町あたりなら、たいして酒が強くもない社長でさえ、
日本酒五合くらいは軽くいけちゃいますよ。
てなことを心の中でひとりごちた社長でした。

さて、最後に買ったのが、「流儀圧搾」で見つけた「参丸一」の
蛙の刺繍の帽子。

P帽子

これも夏のエコアイテム。(ちなみにサングラスはオークリー)

素晴らしい粋なデザインなのに、
「似合わない」
「ガラが悪い」
と、自分で蔑んでしまい、すっかり、ふて腐れてしまった冬樹社長の休日でした。












冬樹社長fuyukitabata at 19:13│コメント(3)

2011年07月15日


熱帯の異国から日本庭園を造って欲しいという話が来ました。
東南アジアの内陸国、A国。
世界中を旅して歩いている旧知によれば、余生を過ごしたい最後の楽園ナンバーワンとか。
ジャングルや山岳地帯がほとんどで、主幹道路の多くが舗装されていないとも聞きました。

依頼は、超高級レストランのVIPルームの庭で、意匠デザインはすべておまかせとのお話。
庭づくりはまず、現場を見るのが基本ですが、さすがに時期的に忙しく現地に行けないので、
写真を見ながら、インスピレーションを沸きたてることにしました。
イメージは、大切なんです。
そして一気にパースペクティヴを描き起こします。

P1010333新パース

客間から庭に降り立ち、そり橋を渡って石段を上がり、あずまやに腰掛けて眺めると、
「さっき降り立った場所こそが、自身が向かうべき本当の場所であったことに気づく」
という深イイ~意味を込めたつもりです。
これは釈迦の教えである捨無量心(しゃくむりょうしん)を謎解きに工夫したもので、
仏教国であるA国に対する、社長なりのイメージでしょうか。

この意匠の具現化には、華奢な感じの風情のある株立の樹木が外せません。
熱帯性モンスーンの気候のこともあるし、なるべくA国の地場の在来種から選びたいと思い、
独自に現地通に頼んで調べて貰いました。

その回答結果。

候補①株立のダイオウヤシ・・・人が登ってココナツを採れます。(はああ?)
候補②オオバマホガニー・・・センダン科。非常に大きくなります。(どんだけ?)
候補③菩提樹・・・葉柄が長い。お釈迦様の木。(イメージ的にはいいかも?)
候補④ブルメリア・・・キョウチクトウの仲間、毒がある。(毒?猛毒?)
候補⑤サンタンカ・・・低木。刈込んで日本のツツジのような使われ方をする。
             花はジャスミンのよう。(ほう?)
候補⑥ユカン・・・日本でいうところのヌルデやアカメガシワなどの先駆的プランツ。
          実は食べられる。(食べなくても!)
候補⑦モクマオウ・・・マツなどの針葉樹みたいに見えるが被子植物。
             (小笠原に侵入した外来種で問題視されているやつだ!)
候補⑧ナンヨウザクラ・・・サクラとは名ばかりでシナノキの仲間(ダメじゃん!)
候補その他・・・チーク、ガジュマル、ブーゲンベリア、マングローブ他。(・・・。)

いろいろクリアーすべき課題が多そう・・・。

              

話は変わりますが、パースを描く鉛筆を削るのに、
社長は折れた日本刀を使っています。

P日本刀

無銘の脇差ながら室町時代初期の古刀で、相当実戦で使われたものといいます。
故あって譲ってくれた貴人のもとにある刀の切っ先は、折れてなお凛としたものでした。
刃紋も沸(にえ)も匂も分からない程に砥ぎ減らしたとはいえ、さすがに玉鋼。
切れ味は端倪すべからぬもので、竹の筧など小細工にも重宝しています。

社長も職人の端くれ。仕事で使う刃物にはこだわりがあります。
またの機会に色々紹介したいと思いますが、
どうしてもひとつだけ。


Pクロコダイル

越前武生の鍛冶 佐治武士が特別に鍛えた一振り。
何層も重ねて鍛えた有色ダマスカス鋼特有の優美な刃紋。
柄と鞘は鼠色のワニ革で拵えてあります。
社長が死出の旅に出ずる時、守刀にしたい逸品です。

注・許可なく刃物を携帯することは銃刀法で禁止されています。
☆違反した冬樹社長。(イメージ画像)

CIMG投獄



くどいようですが、イメージは大切なんです。








        





冬樹社長fuyukitabata at 00:58│コメント(6)トラックバック(0)

2011年07月08日


社長が今、何気に注目しているのが、この人の描く日本画。
ちきりや絵師・増田真知子氏(新潟県上越市生まれ)

梅蛙

なぜか心に残る独特な和の世界観に瞠目しています。
とくに、かえるが良いですね!

じつは冬樹社長、最近ひそかに、かえるの造形にハマっているんです。

今回は社長が造った作品(?)のなかから、柳と蛙をテーマにしたものを
選んで紹介します。

ガラス蛙

グラスのサンドブラスト。
砂をガラスの表面に吹き付けて、彫刻的な加工を施す技法。
深彫り、段彫りなど、掘り込む深さの加減で立体的な表現ができます。


下駄

桐下駄。
社長の下駄歴は長いんですよ。
学生時代、TVの柔道一直線を見て購入した鉄下駄にはじまり、
高下駄、庭下駄、本柾目下駄と履き減らして来ました。
京都祇園の石畳のカラコロ音なんかメチャ最高ですね。
ちなみに下駄は、足のツボを刺激して内臓を健康にすることが
医学的にも証明されているそうです。


最後に、柳と長靴を履いたかえるのモニュメント(でかっ!)。
ふじのアート・ヴィレッジでご覧下さい。

かえるモニュメント






冬樹社長fuyukitabata at 22:02│コメント(3)トラックバック(0)